会報 第142号
会長ご挨拶
全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会
会 長 有 吉 万 里 矢
(東京都立光明学園PTA肢体不自由教育部門会長)
昨年元日に能登半島地震が発生してから1年が経ちました。能登地方では更に9月に記録的豪雨にも見舞われました。また全国各所でも様々な災害が起き、深刻な被害がもたらされています。被災された方々に心よりお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復興をお祈りいたしております。
しぴれんHPをご覧くださりありがとうございます。
本連合会では、1月16日に保護者中央研修会を開催し、約70名の会員の皆さまが参加されました。「意思決定支援 ~誰もが自分らしく生きるために~」を研修会のテーマとし、東京都足立区にある社会福祉法人からしだね うめだ・あけぼの学園長の酒井康年様に講師を務めていただきました。「重度障害児者が思いを表出し自ら物事を選択しながら生活していくためには、幼少期から情緒を育み経験値を上げていくことが大切である」ということについて、福祉制度の活用事例などを交えてご講義いただきました。
今回の研修会は息子が在籍する「東京都立光明学園」が会場となりました。昭和7年に日本で初めての肢体不自由教育校「東京市立光明學校」が創立されてから90年、昨年12月24日には光明学園創始90周年並びに新校舎落成記念式典が挙行されました。研修会終了後に光明学園見学ツアーを行い、最も古い歴史を有し、最も新しい設備が整った学校を皆さまにご覧いただきました。
90年という長い歴史の中で、様々な方がご尽力くださり、特殊教育は全国に広がり、現在の特別支援教育に至りました。もし、重度重複障害がある息子が義務教育を受ける権利がなかったとしたら、もし、障害種別の教育が確立していなかったとしたら。「もし」を考え始めると切りが無く、とても恐ろしくなります。当事者や家族は声を上げ、その思いを受けて多くの方々が解決策を検討し、制度化に向けて力を注いでくださいました。
声を上げることは大切です。障害児者の生活、その家族の生活は、私たちが想像している以上に世の中に知られていません。声を上げなければ「困っていることは無い」と解釈されてしまいます。「皆で声を上げること」が、私たち連合会の活動の一丁目一番地ではないでしょうか。PTA活動が敬遠されている昨今ですが、私たちが声を上げ続けていかなければ今まで先輩方が訴え続けてくださったことは無かったことになってしまいます。
厚生労働省の今年度補正予算案における「重症心身障害のある方が特別支援学校卒業後に利用する生活介護において、生涯学習の機会をサービス提供の中で提供することで、重度の障害のある方の生活能力の向上と共生社会の実現を図る」ことを目的とした施策「特別支援学校卒業後における生活介護利用モデルの作成事業」が成立しました。長年の間、先輩方が訴え続け、届かないと思われていた願いが実現に向けて動き始めました。本連合会の要望書の中でも取り上げている願いです。
PTA活動は時に大変だと感じることもあると思います。見直しも大切なことです。実りある活動とは何かを皆で考え、共有してまいりましょう。
令和7年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
相談役ご挨拶
全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会
相談役 島 添 聡
(全国特別支援学校肢体不自由教育校長会会長・東京都立光明学園統括校長)
全国の肢体不自由特別支援学校の会員の皆様、全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会の活動にご尽力いただき、誠にありがとうございます。
昨年の令和6年8月の全肢P連石川大会では、能登半島地震の被災の様子、またその後の対応を特別支援学校の関係者の視点からご報告をいただきました。その後も豪雨に見舞われるなど、今もなお、大きな影響が続いていることと思います。被災された皆様が一日も早くそれまでの生活に戻れるよう祈念しています。
全肢長会では、令和6年11月に全肢研大会(熊本大会)を参集型で実施しました。その際に、熊本地震で対応に当たられた当時の校長先生から、現地での様子やその後の学校再開に向けての対応について伺ったところです。学校は、特に特別支援学校は福祉避難所として、地域からその役割を期待されていることが改めて確認することができました。その地域ごとの状況に応じて、PTAの皆様や地域の皆様と連携して、日ごろからの備えを進めていきたいと思います。
国(文部科学省)は、能登半島地震での被災地の学校における課題として、学校教育活動の再開に遅れが発生したことを挙げています。このような課題への対応として、令和7年度概算要求には“災害時における地方公共団体間学校支援の取組強化事業”があります。地域の避難所となっている公立小・中学校を念頭に考えられていると思われますが、特別支援学校、特に肢体不自由特別支援学校は通常の学校の取り組みだけでは、不十分であることが予想されます。そこで、公立小・中学校での取り組みを把握し、そのうえで不足することを必要な要望として取りまとめ、全肢P連として国に挙げていくことが必要です。これからも連携して進めてまいりましょう。
昨年もこの会報でお知らせしましたが、令和6年12月11日(水)に「ミラコン 2024~未来を見通すコンテスト~ 第7回プレゼンカップ全国大会」のFinal Stageを心身障害児総合医療療育センター療育研修所を会場にして実施しました。この大会は、全国を7つのブロックに分け、各ブロックで一次審査(ブロック大会)を行い最優秀作品が全国大会に出場します。Final Stageでは、出場した選手(生徒)の学校と大会会場をオンラインでむすび、リアルタイムで大会を行いました。年々プレゼンテーションの質が充実、向上し、審査員を悩ませることとなりました。なお、大会の詳しい内容は、日本肢体不自由児協会の「はげみ」特集号等で皆様にもご紹介されます。ぜひ、御覧ください。
今後とも、全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会がますます発展し、子どもたち一人ひとりが輝く未来を築くことができるよう、力を合わせて参りましょう。今年もよろしくお願いいたします。
令和6年度ブロック活動報告
■北海道・東北ブロック
◆北海道・東北ブロック長 柴 崎 恒 博
(福島県立郡山支援学校PTA会長)
北海道・東北ブロックでは、令和6年6月21日に青森県立青森第一高等養護学校が主管校となり、第56回北海道・東北地区特別支援学校 肢体不自由教育校長・PTA会長合同研究協議会「青森大会」をオンライン形式で開催いたしました。
研究協議では、「『社会に開かれた教育課程の充実』に向けた取組について」、「青森県立弘前第二養護学校のPTA活動と諸課題について」のテーマで話し合いました。
講演会では、弘前大学教職大学院の教授 菊地一文 氏より、「肢体不自由教育における社会に開かれた教育課程の充実~地域リソースを生かした主体的・対話的で深い学び~」というテーマで大変貴重なお話をいただきました。
今年度は初めてのPTA会長、更にはブロック会長を務めさせていただき、他の学校の取り組みを知ることができた有意義な時間となりました。また、ブロック会長であることから全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会副会長として、全国の役員会や研究大会に出席し全国の皆様と交流を深め非常に貴重な経験をさせていただきました。
今後も保護者の皆様、先生方と連携し、子どもたちにとってより良い学校生活を目指してPTA活動に取り組んでいきたいと思います。ありがとうございました。
■関東・甲越ブロック
◆関東・甲越ブロック長 永 吉 理 香
(横浜市立北綱島特別支援学校PTA代表)
関東・甲越ブロックでは、横浜市立肢体不自由特別支援学校で力を合わせた運営により、第60回関東甲越地区肢体不自由特別支援学校PTA連合会研究協議会「神奈川大会」を、記念講演と分科会の発表はオンデマンド(令和6年6月22日~12月20日)、分科会の意見交換は令和6年7月9日にオンラインにて実施しました。また、神奈川県の支援学校で熱心に取り組んでいる「防災」をテーマにした『記念情報誌』とクリアファイルを各加盟校に配付しました。
人と人が繋がるには実際に会って話すことが一番だと思いますが、一方で遠方に赴くことが難しいという保護者の方も多くいらっしゃいます。今回は「より多くの方に直接情報を届ける」という考えのもとに、このような形をとらせていただきました。改めて、ご参加いただいた皆様、運営・準備に関わってくださった皆様に心より御礼申し上げます。
■中部ブロック
◆中部ブロック長 杉 下 裕 子
(愛知県豊田市立豊田特別支援学校PTA会長)
令和6年5月17日に本校が主管校となり、第1回中部地区肢体不自由特別支援学校PTA連絡協議会をオンライン形式で開催いたしました。
「子どもたちが豊かな生活を育むためのより良い支援を目指して」をテーマに有意義なディスカッションが行われました。中部地区肢体不自由特別支援学校PTAの方々と交流ができたことをとてもうれしく思います。
また、令和6年10月4日に第2回中部地区肢体不自由特別支援学校PTA連絡協議会をオンラインで開催いたしました。
第1回PTA連絡協議会で話題となった「各校の防災に関する取組」について各校ごとに近況報告をしてもらいました。とても充実した情報交換ができました。この情報交換で交わした内容が、今後の各校のPTA活動に生かせていけたらと思います。
1年間中部ブロック長として関わらせていただけたことが、貴重な経験となりました。ありがとうございました。
■近畿ブロック
◆近畿ブロック長 大 森 聡 子
(滋賀県立三雲養護学校PTA代表)
今年度もWeb会議システムを使い、参集・オンライン併用で運営しています。会議を進めるにあたり、参集者の発言を多く拾うことになるため、Web会議の進行においては、より工夫が必要だと考えています。
夏季研修会(7/9)では、第一部:和歌山県立紀北支援学校より「医療」をテーマに、第二部:「PTAの取組と課題」について5つの学校から発表がありました。質問や意見が飛び交い充実した研修になりました。
冬季研修会(1/23)は、栄養について、災害時対応も交えて、管理栄養士の方からご講義いただきます。
PTA活動初心者でしたが、近肢P連で先生や保護者の方々とお話しすることで他校の状況を知ることができ、PTAや学校の未来について考えるようになりました。PTA活動に思い切って飛び込んでよかったです。活動で得たことを他の保護者に共有しなければと思っています。
大阪大会の開催に向けて担当校が準備を進めております。~友とつながり共にいきる~ それぞれに出会いや再会があるかと思うとわくわくします。8月のなにわでお待ちしています。
■中国・四国ブロック
◆中国・四国ブロック長 宮 岡 宏 太
(愛媛県立しげのぶ特別支援学校PTA会長)
令和6年6月6日および7日、中国・四国地区肢体不自由特別支援学校PTA連合会総会およびPTA・校長会合同研究会愛媛大会が、当校を事務局校として、Zoomと現地参加(当校保護者のみ)のハイブリッド形式で開催されました。
研修会では、広島県立広島特別支援学校PTAの宮本様による研究協議会の発表、また、NPO法人ふわり・社会福祉法人むそう理事長で、日本福祉大学客員教授の戸枝先生による講演が行われ、貴重なお話を伺うことができ、大変有意義な時間となりました。
令和6年11月1日には、中国・四国地区肢体不自由特別支援学校PTA連合会研修会「島根大会」が、島根県立松江清心養護学校様が担当校となり、Zoomにて開催されました。
研修会では「進路」「福祉サービス」「防災」の3つのテーマごとに分科会が設けられ、それぞれのテーマについて「子どもたち自身の将来に対する適切な選択をするために必要なサポートとは何か」「適切な福祉サービスを受けるために地域や行政との連携がいかに重要か」「子どもたちとそのご家族にとって命綱となる災害への備えの重要性」について、再考し、さらに理解を深める貴重な機会となりました。
近年、PTA活動の廃止や縮小の流れが強まっていますが、特に肢体不自由特別支援学校のPTA活動には、その重要性が増していると感じています。肢体不自由の子どもたちが安心して成長できる社会を築くためには、学校と保護者が協力し、さらに地域や行政の理解を得ることが不可欠です。単位PTAだけでは、PTA活動を通じてこれらの協力や理解を得ることは容易ではありません。今後も全肢P連が一丸となって、引き続き活動を強化し、「地域や行政の理解」と「私たちが子どもたちのために望む社会の実現」を目指して活動を続けていくことを切に願っております。
■九州ブロック
◆九州ブロック長 米 ヶ 田 研 介
(熊本県立熊本かがやきの森支援学校PTA会長)
令和6年5月24日(金)の午後、九州地区肢体不自由特別支援学校PTA連合会総会をオンラインにて開催いたしました。今年の九州大会は第70回全国肢体不自由教育研究協議会熊本大会を兼ねており、九州地区PTAで協議する機会はこの日だけとなりました。
当日は熊本県立熊本かがやきの森支援学校を会場に熊本県の苓北支援学校と熊本かがやきの森支援学校のPTA会長、副会長が進行を務め、九州地区34校からオンラインで御参加いただき、各校のPTA会長をはじめとする関係者一同でPTA活動の在り方等の情報交換を行うことができました。
去る11月14日15日開催の第70回全肢研熊本大会(兼第61回九肢研熊本大会)では九肢P連の分科会はありませんでしたが、次期開催県である佐賀県PTAの皆様が大会運営の視察をされ次年度大会に繋げることができました。
これからも「九州はひとつ」を合い言葉に、九州各県で協力し合いながらPTA活動に取り組んでいくことを祈念します。1年間ありがとうございました。
肢体不自由教育創始90周年記念事業について
令和4年に迎えた肢体不自由教育創始90周年を記念し、全国特別支援学校肢体不自由教育校長会と共同で90周年記念碑を肢体不自由教育創始の学校である東京市立光明學校から続く東京都立光明学園に寄贈させていただきました。
令和6年12月24日には、ご出席いただいた校長の皆様の立ち合いのもと、記念碑の披露式を執り行い、披露式では、記念碑と記念碑設置祝賀懸垂幕の贈呈目録を設置先校長に進呈させていただきました。
皆様からの温かいご支援、ご協力に心より感謝申し上げます。
令和6年度新規加入校紹介
福岡県立糸島特別支援学校
本校は、令和6年4月に開校した県立特別支援学校で、知的障がい教育部門(小学部、中学部、高等部)と肢体不自由教育部門(小学部、中学部、高等部)(訪問教育)を設置しています。令和6年度は、96名の児童生徒が在籍しています。校訓は「愛郷 夢 共創」です。
学校教育目標として「ふるさとを愛し地域とのつながりを大切にして、夢に向かって小さな「できる」を積み重ね、共生社会の形成に向けて、地域社会の人とともに新たな価値を創り上げていく児童生徒を育む」を掲げています。
また、『少しがんばれば「できる!」を増やす』をスローガンに、児童生徒の自分自身をみつめる力や自らかかわる力、自ら挑戦する力の育成に取り組んでいます。
児童生徒一人一人の可能性を最大限に伸ばし自立と社会参加を実現すること、糸島における障がいのある児童生徒に対する特別支援教育の拠点としての役割を果たすことで、共生社会の形成に向けた特別支援教育の発展に貢献していきたいと考えています。