会報 第136号

 

会長ご挨拶

全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会

     会 長   空 岡  和 代

   (東京都立村山特別支援学校PTA会長)

 

 令和4年度も本連合会の活動にご理解、ご協力をいただきありがとうございました。

 

 1月には初めて、会場参加とオンライン参加のハイブリッド形式で理事会を開催することができました。
 数名の理事の方々には全肢P連事務局にお越しいただき、理事会前にそれぞれの地区での活動の様子を、それを進めてこられた思いや今後に向けたご提案も含め伺いました。
 地域でどのようにブロックの皆様とつながっているか、ブロックでの学習会をどのように開催したか、さらには単位PTA活動で力を入れて取り組んでいることまで。感染症対策に取り組みながら活動をしっかりと進めてこられた具体的なお話を伺い、コロナ禍でつながり続けていただいたエネルギーを強く感じました。
 全てのブロックの役員の皆様と直接お話しすることはできませんでしたが、全ての会員の皆様に改めて感謝申し上げます。

 

 さて話題は変わりますが、皆様はインクルーシブ教育についての国連勧告を受けてどのようなことをお考えになられているでしょうか。
 まず障害をもつ当事者や保護者が、教育を受ける場所、何を大切にして教育を受けたいか、ということに選択肢があり、自由に選ぶことができるということはとても重要だと考えています。
 その上で、我が子が特別支援学校に通う一人の保護者として、特別支援学校で学ぶ良さを多く感じています。
 どんなに障害が重い子供でも、その子供のもつ能力をいかすための環境があります。学校では、一人一人に合わせた支援機器等が整備されて指導方法、支援が考えられているので、それぞれのペースで確実に成長している姿が日々見られます。
 教職員、外部専門家、看護師等が連携して子供たちに関わっていただくので、先生方のチーム力で子供が伸びていきます。子供についての情報がチームで共有されていて、保護者とも密な情報交換が行われているので、子供も保護者も安心して教育を受けることができます。
 グループ分けをして学習に取り組まれているので、子供にとっては身近な所にライバルが存在します。学習の様子を時々拝見すると、お互いに「この子には負けない。」という様子を見せる時があり、保護者として嬉しくなります。また別の教育活動では全てのグループで一緒に学習し、相互に刺激し合うことができています。
 保護者にとっての良さを挙げると、療育について、学習について、地域のこと、余暇の楽しみとなるイベント情報など、欲しい情報が探さなくても多く入ってきます。そして、子育てのことを中心に悩みを共有、相談できる仲間が近くにいて心強さを感じています。
 今回の勧告をきっかけとして私たちは、学びの当事者である子供たちにとってどんな場所で、どんな環境で、どんな内容を学ぶことがインクルーシブな教育と言えるのか、今一度考えて、多くの皆様と語り合うことが必要なのではないでしょうか。その場にぜひ、障害をもつ当事者や保護者のみでなく障害児者のことは関係ない、と思っている方にこそいて欲しい、一緒に考えて欲しいと思うのです。

 

 特別支援学校のホームページにアクセスすると、それぞれの学校ごとに情報盛りだくさんで、子供たちの輝く姿に出会えます。本連合会でも活動内容を、ホームページに限らず様々な形で発信しています。会員の皆様の保護者としての思いや願いを感じていただき、社会の皆様の障害者理解につながることを期待しています。

 

 会員の皆様、いつもご支援いただいている皆様、今後ともよろしくお願いいたします。

 

相談役ご挨拶

全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会

    相談役  伴   光 明

(全国特別支援学校肢体不自由教育校長会会長・東京都立多摩桜の丘学園統括校長)

 

 全国の肢体不自由特別支援学校PTA会員の皆様、こんにちは。全肢P連相談役、全肢長会長の伴光明です。令和4年度も3学期となり、各校PTAにおかれましても年度のまとめや引き継ぎを意識して慌ただしくお過ごしのことかと思います。間もなくお子様のご卒業を迎える時期の方には、学校生活、学部の生活の思い出と共に、新しい生活への期待が膨らむ頃ですね。環境の変化は負担にもなりますが、円滑な移行と、何よりも新しい生活への希望を糧に、前進して行かれるように願っております。
 さて、全肢長会の動きです。最近の取組では、12月に「ミラコン2022~未来を見通すコンテスト~第5回プレゼンカップ全国大会」を盛況のうちに終了することができました。光明学園のメイン会場では空岡会長様に審査員をしていただきました。当日ご視聴になった方、後日配信をごらんになった方、皆様のご声援に感謝いたします。
 この大会はプレゼンテーションを競い合うカップ戦です。全国7つのブロックに分かれて、ブロック内で競い合い、その代表者がさらに全国で競い、最も優秀なプレゼンテーションを行った方が最優秀賞に輝きます。3年前の第3回からは、最優秀賞には文部科学大臣賞が贈られることとなっています。今回の最優秀賞も鹿児島県立鹿児島養護学校高等部、同校はこれで2年連続の最優秀賞を輩出したことになります。今回の大会では当事者の視点から社会のバリアフリー化への提言をすることに留まらず、社会に内包される貧困や地域格差の問題を扱うプレゼンテーションをする生徒が出てきており、大会としての成熟も感じさせるものがありました。
 第5回、と申し上げましたが、実はこの大会は2018年に産声を上げ、コロナ禍にあっても毎年の開催を重ねてくることができました(Covid-19というのは2019年に発生が確認された新型コロナウイルスという意味です)。高校生の全国大会が中止を余儀なくされる中、稀有な例と言ってもいいと思います。なぜ続けられたかというと、企画当初から離れた地域に住まう生徒たちが無理なく競い合える形式を志向してきたからです。ファイナルステージ(本選)はオンラインで全国をつなぎます。お互いのプレゼンを視聴し、メイン会場から審査員の方々に言葉をかけてもらい、質問に答える双方向の運営をしてきました。肢体不自由の特性に応じたICTを活用した遠隔同時開催が、図らずもコロナ禍で進んだオンライン授業等の先駆けとなったような形でした。大会でご講演いただいた株式会社ミライロの垣内社長のお言葉である「バリアバリュー」。障害だと思っていたことを強みに。まさにこの大会の継続がそのことを証明しているのだと思います。
 この原稿を書いている今日は、感染症法でのコロナウイルスの扱いを5類に引き下げる、というニュースが流れています。社会活動の動向が気になります。肢体不自由特別支援学校で児童生徒の健康を守るためには、報道されているような緩和ムードをそのまま当てはめるわけにはいかない、と困惑しながら報道を見ているところです。地域の実情や学校の状況によって、各学校がこの春以降の対応を示していくことになると思いますが、学校と保護者が強力に協力して、ウィズコロナで進む世の中での感染拡大を防止していくように願っております。
 同じく今日は、多摩桜の丘学園の体育館でPTA行事がありました。観劇の会です。愉快に笑い、体を動かすホットな会でした。各校PTAがコロナ禍での制約によって十分に活動できていなかったことを思うと、少しずつでも活動が始まっていくことはとてもありがたいことです。劇が終わった後で保護者の方同士が声をかけあい、力を合わせてシートを片付けている姿を見るだけでも、「集う」力のエネルギーを感じ、このエネルギーがこれからますます高まっていくものと、わくわくしながら拝見いたしました。先のニュースの困惑よりも気持ちがスッキリしました。
 コロナ禍の行く末が不透明であったり、世界情勢や景気の動向など懸念材料が多かったりと、ついつい下を向いて暮らしがちな日々ですが、人がつながることで生じるエネルギーは、何物にも代えがたい笑顔の素だと思います。特別支援学校のPTA活動は、つながりを築いていく大きな力をもっています。各校長は、自校の教育活動の充実を通して、保護者の皆様に元気になっていただき、元気な保護者による活発なPTA活動が展開する好循環を目指して、精進してまいります。御一緒にがんばりましょう。

 

令和4年度ブロック活動報告

■北海道・東北ブロック   

北海道・東北ブロック長  佐藤 美南子
 (宮城県立船岡支援学校PTA会長)

 

 北海道・東北ブロックでは、令和4年6月28日(火)に第54回北海道・東北地区特別支援学校肢体不自由教育校長・PTA会長合同研究協議会「北海道大会」が2年ぶりにオンライン形式で開催されました。研究協議では、校長部会とPTA会長部会に分かれ、それぞれのテーマに沿って、各校の取り組みを報告し合いました。講演会では、東北福祉大学の和史朗先生より、「『夢・愛・心の特別支援教育』と題して、こどもが夢を叶えていけるような特別支援教育。明確なコミュニケーションスキルで体の不自由を補うには。」というテーマで大変貴重なお話をいただきました。大会は2年ぶりの開催で、オンラインではありましたが、北海道・東北地区のコロナ禍での各学校の取り組みを詳しく聞くことができ大変勉強になりました。6月の大会開催時は、コロナの感染者数がかなり落ち着いてきていたので、来年度は対面での取り組みをいろいろとしていきたいという意見が多くありました。
 今年度初めて本部役員になり、校外でのPTAの活動のことは、ほとんど分からない状態での参加でしたが、今回ブロック長として理事会にも参加できたことで、ようやく全体の流れが分かりました。今年度は、「全国大会」「ブロック大会」、「全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会の理事・評議委員会」が、オンライン形式とハイブリット形式で開催になりました。これは日頃、我が子を預けるところもなく、連れて行くこともままならない状態の我が家のような家庭にとっては、本当にありがたい形式だったと思います。参加できたことで他の地域での取り組みを知ることができたり、様々なテーマでの研修会や講演会にも参加したりすることができました。何よりも顔が見えることで、元気をもらえたような気がします。我が子や本校の子供たちにとって、より良い学校生活を改めて考える機会ともなり、本当に良かったと思っております。貴重な経験をありがとうございました。

 

 

  

 

関東・甲越ブロック

◆関東・甲越ブロック長 江口 可奈子
 (千葉県立船橋夏見特別支援学校PTA会長)
 

 本年度は、関東甲越地区肢体不自由特別支援学校PTA連合会及び校長会合同研究協議会「千葉大会」を令和4年7月22日~8月31日までWeb開催にて実施することができました。記念講演をしてくださった前田先生と助言者の皆様、分科会発表校の皆様に感謝しております。また、会員の皆様と少しでも関わりたいと思い、アンケート記入欄を設けました。たくさんの方がご記入してくださり、情報の共有と交換ができたことを嬉しく思います。
 全肢P連北海道大会では、分科会の中でオンラインでつながり、話し合う時間がありました。同じ思いを持ち、同じような事で悩んでいる全国の方々とお話ができたことはとても有意義な時間でした。やはりお顔を見て話ができることは大切だと感じました。直接お会いして情報交換ができる日が近いことを願います。1年間、関東・甲越ブロック長として関わらせて頂けたことは貴重な経験となりました。ありがとうございました。

 

 

中部ブロック

◆中部ブロック長 何輪 佳子
 (岐阜県立関特別支援学校PTA会長)

 

 令和4年6月3日(金)に、第1回中部地区肢体不自由特別支援学校PTA連絡協議会、令和4年10月7日(金)に、第2回中部地区肢体不自由特別支援学校PTA連絡協議会、第60回中部地区肢体不自由教育研究大会《静岡大会》をオンラインにて開催いたしました。
 連絡協議会での情報交換会では、未だに続く新型コロナウイルス感染症におけるPTA活動、PTA役員選出について、意見交換がなされました。また、災害時の対応についての意見交換も行いました。関特別支援学校では、防災等情報交換会をPTAで行いました。たくさんの情報を得ることができ、とても有意義な時間でした。
 《静岡大会》では、パラサイクリストの福井万葉氏による講演が行われました。ご本人と介助者とお母様の三人による、とても楽しい講演でした。
 本年度はオンラインという形での開催でしたが、滞りなく開催できたことに感謝申し上げます。いつか皆様とお会いできる日を楽しみにしています。ありがとうございました。

近畿ブロック

◆近畿ブロック長 南 見奈子
 (京都市立北総合支援学校PTA会長)

 今年度の近肢P連では、Web会議システムZoomを活用することにより、遠方から会場に参集する役員の負担軽減を図るとともに、より多くの会員の皆様に研修の機会を提供できるよう、開催方法・テーマなどについての検討を行いました。
 7月の夏季研修会では、第1部で第65回全国大会発表校によるプレ発表(テーマ「学校」)、第2部では「コロナ禍におけるPTA活動の工夫」について2校から発表していただきました。初めてのハイブリッド開催でしたが、オンライン、会場それぞれから質問やご意見が出て、大変充実した研修会となりました。
 1月の冬季研修会では、防災士で大阪府教育委員会委嘱学校防災アドバイザーの湯井恵美子氏による「防災講座」をハイブリッドにて開催。障害のある子供たちの学びと命を守るために学校とPTAが果たすべき役割や、家庭、地域、関係機関との連携の重要性についてご講演いただきました。講演の模様は、会員を対象にアーカイブ配信する予定です。
 1月の全肢P連理事評議員会には会場で参加させていただきました。会議の前後には全肢P連 空岡会長をはじめ事務局の皆様、他ブロックの理事評議員の皆様との意見交換をする機会に恵まれ、あらためて対面での交流の大切さを痛感しました。

 今後、PTA運営の合理化は益々進んでいくと思いますが、人と人とのつながりや信頼関係があってこその合理化。これからも会員相互のつながりを大切にし、肢体不自由教育の発展に向けた活動がさらに充実していくことを願ってやみません。

2022年7月 近肢P連夏季研修会@大阪ドーンセンター(ハイブリッド開催)

 

2023年1月 近肢P連冬季研修会@大阪ドーンセンター(ハイブリッド開催)

■中国・四国ブロック

◆中国・四国ブロック長 弘中 恵美
 (山口県立周南総合支援学校PTA会長)

 

 6月9日~10日に令和4年度第55回中国・四国地区肢体不自由特別支援学校PTA連合会総会「山口大会」を前年に引き続きオンラインにて開催しました。研究協議会では、「地域」をテーマに香川県立高松養護学校による提案発表を受け、周南公立大学副学長 渡部明氏よりご助言をいただきました。また、徳山工業高等専門学校機械電気工学科准教授 三浦靖一郎氏を講師にお迎えし、「困り感の共有と資源の見直しからはじめる持続可能な地域連携」と題してご講演をいただきました。無事に大会を終えることができ、ご参加いただきました皆様には改めて感謝を申し上げます。
 また、11月には、徳島県立板野支援学校よりYouTube配信にて、令和4年度第38回中国・四国地区肢体不自由特別支援学校PTA連合会研修会徳島大会が行われました。学校紹介の後に、徳島赤十字ひのみね総合療育センター 理学療法士 廣島信哉氏による「家庭で取り組める身体へのアプローチ~リラックス~」、一般社団法人体力メンテナンス協会 体力指導士 佐々木育代氏による「ココロとカラダをリフレッシュ!!簡単体力メンテナンス」、徳島文理大学 教授 柳澤幸夫氏による「車いすでの避難支援方法について~移動方法のポイントを学ぶ~」の3つの講演がありました。
 来年度の総会「岡山大会」、研修会「高知大会」もWeb開催を予定しています。会員の皆様に感謝し、ご報告とさせていただきます。

 

■九州ブロック

◆九州ブロック長 中島 なぎさ
 (大分県立別府支援学校鶴見校PTA会長)

 

 令和4年10月、九州地区肢体不自由教育研究大会大分大会が開催されました。本大会は各学校の実践を出し合い、九州地区の肢体不自由特別支援学校の活動について協議を深めるとともにこれからの在り方や展望について語り合い今後の各学校のPTA活動や教育の一層の充実を図ることを趣旨としたものです。

 文部科学省講話、記念講演や分科会、PTA座談会が行われました。なかでも印象深かったのはPTA座談会でした。

 3つのテーマについて情報交換・共有を図ることができました。施設から学校に通っている生徒や、毎日通学している生徒。生徒数の多い学校、少ない学校。学校毎に特色があり取り組み方を聞くことができ、未来へつながる大変有意義な座談会となりました。

 今大会にご尽力くださった関係者の皆様には深く感謝申し上げます。
 来年度開催の鹿児島大会を楽しみにしております。

 

令和4年度新規加入校紹介

愛知県立にしお特別支援学校 

 本校は、愛知県初の知的障害のある児童生徒と肢体不自由のある児童生徒を対象とした特別支援学校として令和4年4月に開校しました。知的障害教育部門182名、肢体不自由教育部門69名が在籍しており、校訓は『かがやく笑顔 つながる人の輪 ひろがる可能性』です。
 スクール・ポリシーには、一人一人の教育的ニーズや特性に応じた教育を行い、児童生徒の自分らしさや個性を伸ばし生きる力を育むこと、地域社会や人とのつながりを大切にしながら、自立と社会参加への基盤を培うとともに、自己の可能性を広げていくことのできる児童生徒を育成することを掲げています。
 開校初年度は、人権教育の推進、道徳教育の推進、生涯教育の推進に重点的に取り組んでいます。専門性が十分に発揮された教育の中で、併置校のメリットを最大限に生かし、本校の魅力と伝統を築いていきたいと考えています。教職員・保護者が協力し、児童生徒の活躍の場を広げ、地域とのつながりを深めていくことができるよう一層努力してまいります。