会報 第125号
会報 第125号
会長 ご挨拶
全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会
会 長 澤 村 愛
(東京都立光明学園PTA会長)
~願い(共生社会へ、生涯学習の社会へ)~
新しい年がはじまりました。1月10日には第2回理事会が開催され、全ての議事が滞りなく終了いたしました。皆さまのご理解とご協力に感謝申し上げます。
「人間が想像できることは人間が必ず実現できる」
これは海底二万マイルを書いた作家でSFの父と言われる、1800年代に活躍したフランスの、ジュールヴェルヌの言葉だそうです。素敵な言葉だと、私は思います。
私たちの子供には体に不自由があるといわれています。それは、心に不自由があるということではありません。私たちの子供は人に愛される為に生まれてきました。社会に受け入れられる為に生まれてきました。
文科省では「学校における医療的ケアの検討会議」が引き続き開催されています。
総務省でも新たにデジタル活用共生社会実現会議が始まりました。ICT機器を活用し、誰もが豊かな人生を享受できる共生社会実現をめざすための検討会議です。会議の中で「肢体不自由等の障害のある子どもたちのアクセシビリティ確保は、ICT機器やそのソフトの環境整備だけではなく、『本人以外は全て環境』ととらえ、ヘルパー等の人的サポートの環境もあわせて整備する必要があるのです」と発言させていただいています。
共生社会実現へむけて、世の中は動き始めています。
1月10日の保護者研修会はNPO法人地域ケアさぽーと研究所の理事の下川和洋先生が指導助言者でした。「生きることは学ぶこと、学ぶことは生きる喜び」。学齢期のみならず、生涯にわたる学びの重要性を唱え、それが人間の尊厳なんだという理念のもと活動をされています。重度の障害者をも学びの対象者とし、私達に大きな希望を与えてくださっています。
各学校のPTA活動の中で。全肢P連の活動の中で。日本という国の中で。広く世界の国々の中で。共に生きる社会の構築が実現されることを。そして全ての人が生涯にわたる学ぶ喜びを得られる社会が実現されることを。
新しい年の始まりに、私は願います。
相談役 ご挨拶
全国肢体不自由特別支援学校 PTA 連合会
相 談 役 田 村 康 二 朗 (全国特別支援学校肢体不自由教育校長会々長・東京都立光明学園校長)
~30年を振り返って~
平成の時代がバトンゾーンに差し掛かりつつあります。様々なメディアがこの30年間を総括していますので、本会を取り巻く30年間もこの紙面で振り返ってみます。
平成 元年 |
◆全国の肢体不自由養護学校数:186校、在籍数13,176人 |
平成 4年 |
・アジア・太平洋障害者の10年、サラマンカ宣言採択 |
平成 5年 |
・心身障害者対策基本法を「障害者基本法」に改正、完全参加と平等を明記 |
平成 7年 |
・阪神・淡路大震災。全肢P兵庫大会は日程・会場を変更して開催 |
平成10年 |
◆全国の肢体不自由養護学校数;193校、在籍者数12,566人 |
平成11年 |
・養護学校学習指導要領改訂で「養護・訓練」が「自立活動」に |
平成12年 |
・肢体不自由養護学校高等部の訪問教育が本格実施へ |
平成13年 |
・文科省が「21世紀の特殊教育の在り方について(最終報告)」を公表 |
平成14年 |
・公立学校完全週5日制実施。(毎週土日の2連休が定着) ・新障害者基本計画に基づく重点施策実施5ヵ年計画を公表。養護学校においては「個別の支援計画」を平成17年度までに策定すること |
平成17年 |
・文科省が「特別支援教育を推進するための制度の在り方について」の答申を公表 |
平成19年 |
・特別支援学校制度開始、多くの養護学校が校名変更。併置化の契機に。 |
平成20年 |
◆全国の肢体不自由特別支援学校数:282校(併置等を含む)、在籍者数30,363人 |
平成22年 |
・内閣府による「障がい者制度改革推進会議」に濱川全肢P連会長(第17代)と田村全肢長事務局長(当時)の両名が出席し、「肢体不自由特別支援学校だからこそ、安心して教育を受けられる場合もある。制度改革は肢体不自由児と保護者にとって制度の充実こそあれ、不安を与えるものであってはならない」と意見陳述 |
平成23年 |
・東日本大震災が発生し、全肢P連・全肢長が連携して、全国の会員・学校・教職員に支援を呼びかけ、義援金約1千万円を被災した特別支援学校およびPTAに送る。 ※福島県立郡山養護学校は肢体校で唯一の長期避難所に(約3カ月)。 |
平成24年 |
・一定の研修を受けた教員・介護職員は、一定の条件の下、都道府県の登録を受けた学校等において、医療行為である喀痰吸引等の行為を実施できるよう法改正 |
平成28年 |
・全肢長主催・全肢P連後援で肢体校対象の初の全国大会「ボッチャ甲子園」開催 |
平成29年 |
・全肢P連結成60周年記念大会「東京大会」を開催 ・文科省が「学校における医療的ケアの実施に関する検討会議」を設置、竹内全肢P会長(第19代)と田村全肢長会長が委員に就任。※平成31年3月に最終報告予定 |
平成30年 |
◆全国の肢体不自由特別支援学校数:350校(併置等を含む)、在籍者数31,813人 |
平成31年 |
・全肢長主催・全肢P連後援で全肢体校高等部生の弁論大会「ミラコン2018」開催 |
ベルリンの壁が崩壊した平成元年から30年、PC普及期からインターネット前提のスマホ・タブレット時代へと生活環境も変貌しました。養護学校から特別支援学校へと制度上の名称がかわって10年余となりました。平成期の30年で164校増、18,637人増と仲間が増えた時代でもありました。
いつの時代になっても、次の社会の担い手である子供達の教育の大切さは変わりません。学校を介在して保護者会員と教職員会員が手を取り合って「地域の宝物」である子供たちを一緒に育てていきましょう。
間もなく新たな時代を迎えます。全肢P連は70周年の節目に向かってバトンを引き継いで参ります。皆様、力を合わせて進みましょう。
各ブロック活動報告
■ 北海道・東北ブロック 山形県立ゆきわり養護学校PTA会長 横山 桂
北海道・東北ブロックでは、校長・PTA会長合同研究協議会岩手大会を開催しました。
1日目は研究協議や教育懇談会が行われました。特色あるPTA企画活動や大規模災害時のPTAとしての対応、役員の選出などについて各校の情報を交換しました。
2日目は岩手県立盛岡となん支援学校の視察見学や講演が行われました。昨年竣工したばかりの校舎や施設設備、そこで学習する児童生徒の様子を見せていただきました。また、絵やイラストが得意な保護者による校長先生やPTA会長の似顔絵も拝見し、和やかなPTA活動の様子を垣間見ることができました。岩手県立療育センター所長嶋田泉司氏による講演「『医療と教育の連携のために』―都南の園から岩手県立療育センターへ 小児科医が思ったこと、想うこと―」を拝聴し、「変わる『勇気』と変わらぬ『優しさ』」というお言葉で、今後のPTA活動活性化への意欲がより一層高められました。
研究協議Ⅱ 校長・PTA会長合同部会 |
■ 関東・甲越ブロック 新潟県立東新潟特別支援学校PTA会長 森田 和子
平成30年7月29日(日)~30日(月)、ANAクラウンプラザホテル新潟を会場に第54回関東甲越地区肢体不自由特別支援学校PTA連合会及び校長会合同研究協議会「新潟大会」を開催しました。「子どもたちの未来のために今できること」を大会主題として、UTハートフル株式会社 事業課長 宮下 準一 様より、記念講演「在宅就労でまずは社会参加を!自分の力を伸ばして、次の舞台へ!」を実施しました。また、分科会では「PTA活動の活性化」「学校教育と医療的ケア」「子育てと生きがい」「子どもの自立」の各テーマについて実践発表に基づいた協議が行われ、参加者からは「他校の工夫が分かり、自校の取組をどうしたらよいかが学べた。」「行政への働きかけの参考となった。」という感想が寄せられました。県内外総勢404人の参加者(学校職員238名、保護者143人、児童生徒23人)があり、大変有意義な大会を実施することができました。
記念講演 |
グループディスカッション |
■ 中部ブロック 愛知県立小牧特別支援学校PTA会長 安藤 裕司
平成30年5月17日~18日に第1回中肢P連絡協議会総会・研究協議会を行いました。
連絡協議会では「PTA活動を無理なく計画していくための環境づくり」をテーマに、活発な意見・情報交換がなされました。
次いで10月4日~5日には、第56回中部地区肢体不自由教育研究大会(石川大会)にて「一人一人の生きる力を育むためのより良い支援と連携」をテーマに分科会を開き、静岡県立中央特別支援学校と愛知県立ひいらぎ特別支援学校の両PTAから活動報告・提案が行われました。
2日目の連絡協議会と併せ、ここでも活発な意見交換がなされ、各学校・地域の情報を得る、貴重な機会となりました。
また、こうした定期会合以外にも、グループラインを活用しての情報交換等も頻繁に行われており、役員同士のつながりを深めています。
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■ 近畿ブロック 奈良県立奈良養護学校PTA会長 植月 智子
近畿ブロックの主な活動は5月の交流会と夏季、冬季研修会です。今年も例年通り行われました。(冬季研修会は平成31年1月に予定しています。)
①平成30年5月24日に総会・交流会を開催。
交流会は、「進路」をテーマに各校のPTAの取り組みを発表していただきました。事前にレポートを提出してもらい、当日はA・B・Cの3つのブロックに分かれ意見交換会を行いました。交流会全体を通じて感じたことは、進路に関してはどの学校も同じような悩みを抱えていることがわかりました。それぞれの取り組みを発表、情報交換を行うことで今後の取り組みの参考となることも多くあり、充実した会となりました。
総会 |
総会 |
交流会 |
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②平成30年7月3日に夏季研修会を開催。
5月の交流会での各校の情報や取り組みをまとめて代表者が発表し、全体で意見交換を行いました。有益な情報や難しい問題が多数あり、各校の役員がそれぞれの学校に持ち帰り全体の保護者と情報を共有し、問題点に関してはさらなる改善策を引き続き検討することになりました。
また、同日に全肢P連福井大会分科会「医療」の発表校である兵庫県姫路市立書写養護学校より、「子どもたちの健康・安全の保持を基本に、医療機関や従事者との連携をどのように深めていくか」のテーマでプレ発表を行っていただきました。8月の本発表に向けて活発な質疑応答が行われました。
夏季研修会 |
■ 中国・四国ブロック 岡山県立岡山東支援学校PTA会長 鈴木 紀子
6月7日~8日に総会およびPTA・校長会合同研究会岡山大会を行いました。開会行事、総会に続き、『誰もが主人公~かけがえのない日々を自分らしく生きる~』と題して社会福祉法人泉学園理事の福田博明氏にご講演をいただきました。その後『機器』のテーマで愛媛県立しげのぶ特別支援学校の発表があり、それを受けてのグループ討議では活発な意見交換が行われました。
岡山大会 福田氏 講演 |
岡山大会 グループ協議 |
11月15日~16日には香川県立高松養護学校において研修会を開催いたしました。昨今の自然災害による甚大な被害を受け、各校の取り組みや課題について、学部ごとに分かれて話し合いました。二日目には東京大学の中邑教授と高松養護学校の先生方より『子どもたちがiPadを装備すれば冒険に出られる!~魔法のプロジェクトの実践から~』と題して、ワクワクするようなお話をたくさん聞かせていただき、実りある大会となりました。
■ 九州ブロック 福岡県立福岡特別支援学校PTA会長 山本 映美
平成30年5月29日(火)福岡リーセントホテルにて、九州地区肢体不自由教育研究会役員会・PTA連合会総会・PTA会長会を行いました。PTA会長会では、『進路』について情報交換を行い、各学校の取組や卒業後についての不安、施設選びについてのアドバイス等、貴重なお話を伺うことができました。
九州ブロックでは、例年、春に役員会を行い、秋に3日間の教育研究大会を開催しておりますが、平成30年度につきましては、第64回全国肢体不自由教育研究協議会と第55階九州地区肢体不自由教育研究大会福岡大会の合同大会として開催されましたので、PTA連合会としての活動は、春の1日のみとなりました。来年度の長崎大会では、今年度分と併せて充実した活動に繋げていきたいと思います。
~新規加入校のご紹介~
愛知県刈谷市立刈谷特別支援学校
はじめに
本校は、平成30年4月に開校した肢体不自由のある児童生徒が通う特別支援学校です。対象としている児童生徒は、刈谷市、知立市、高浜市在住としています。通学に関しては、保護者の送迎か最寄りの駅から徒歩での通学となります。
学校は、刈谷市南部にある小垣江東小学校と併設しており、障害のある子と障害のない子が、共に学ぶ環境となっています。
教育目標
児童生徒一人一人の人権を尊重し、障害による学習上又は生活上の困難に応じた専門的な教育を行います。また、安心・安全な学校生活を送りながら、一人一人の個性を伸長し、確かな学力や健康、体力、そして豊かな人間性などの生きる力を育み、地域社会の一員として自立し、主体的に社会参加するするとともに、生涯にわたって心豊かに生きていく人材を育成します。
校 訓 「笑顔 挑戦 感謝」
教育活動
本校では、医療的ケアを必要とする児童生徒へ対応するために、刈谷市が刈谷豊田総合病院と連携し、出向看護師の配置をすることで、児童生徒の教育を保障します。
校舎全景 |
出向看護師による医療的ケア |
隣接小学校との中庭 |
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