わたしたちのまちの学校 VOL.1|熊本| 互いの良さを認め合い、可能性へ挑戦する 熊本県立松橋支援学校
VOL.1|熊本|
互いの良さを認め合い、可能性へ挑戦する
熊本県立松橋支援学校
熊本市内から九州自動車道 熊本ICから松橋ICまで約20分。ICを降りて10分足らずで松橋支援学校に到着しました。
広々とした土地に、平屋の校舎は、とても開放的でゆったりとした雰囲気があります。
熊本の風に校旗がたなびいていました。
迎えて下さったのは甲斐憲彦校長先生と高木佐由理副校長先生。
お二人とも穏やかなお人柄で、ゆっくりと学校のお話を伺いました。
校長の甲斐 憲彦先生(左)と副校長の高木 佐由理先生(右)
―松橋支援学校の特徴を教えてください
昭和42年に肢体不自由の児童・生徒を対象に開校した歴史ある特別支援学校です。
校訓は、「じょうぶで、明るく、粘り強く。」学校教育目標は、「ひとり一人の子どもを大切にし、それぞれに応じたきめ細やかで専門性の高い教育により、個性が輝き、生き生きと活動する子どもの姿を実現する」ことです。
風通しのいい校長室に常に掲げられている教育理念
―学部・学科は?
小学部・中学部・高等部があり、それぞれに一般学級、重複障がい学級があります。高等部には、平成20年度に、軽度の知的障がいのある生徒を対象とした専門学科が設置されました。園芸科・工芸科の2学科があり、職業的自立と社会参加を目指しています。また、平成26年4月より、閉校した熊本県立氷川高等学校の施設設備を活用した氷川分教室(知的障がい一般学級)も開室しました。
児童・生徒の授業風景
―寄宿舎が併設されているのですね
松橋支援学校の特徴の一つに寄宿舎があります。
松橋支援学校の児童生徒数は、小学部10 名、中学部9名、高等部普通科18 名、高等部専門学科51 名、氷川分教室23名で構成され、県下各地より入学した111 名の児童・生徒が学んでいます。
学校に併設された寄宿舎で、30人の生徒が、寝食を共にしながら寄宿舎生活をしています。
寄宿舎では舎外活動として、カラオケ&夕食会を企画したりもしています。おしゃれをしてワクワク感いっぱいの当日は、笑顔満載でした。
広報「きらり☆」より 社外活動の様子
―松橋支援学校ならではの取り組みとはどんなことでしょう?
学校スローガン「可能性への挑戦」「互いの良さを認める」「最後まであきらめない」のもとに様々な活動をしています。
昨年度は肢体不自由児・者のデジタル写真展で、高等部普通科重複学級3年生の作品が、特賞を受賞し、東京で行われた授賞式に行ってきました。
他にも、熊本県の「心の輪を広げる体験作文」の優秀賞、青少年読書感想文コンクールでの佳作(「『心を整える』を読んで」)、「くまもと教育の日」フォトコンテストでのNHK熊本放送局賞等、様々な児童・生徒の活躍があります。
広い渡り廊下の壁にはたくさんの生徒たちの受賞歴が飾られている
―卒業後の進学について
昨年度末は熊本学園大学社会福祉学部に3名合格し、大学進学を果たしました。
熊本大会の会員研修で講演する柴田美優(しばたみゆ)さんも松橋支援学校の卒業生です。
美優さんも、小学部からの12年の学校生活の中で、学習を重ね、知識と共に、自分の夢を実現させるチカラを身に着けました。夢の実現のために・・美優さんやお母さんの直美さんが何をしたのか?どんなことが必要だと思うか?などは、是非、講演会を楽しみにしていてほしいと思います。
学校では「進路学習会」で卒業生などを招いていますが、日常的にも、自分の進学も含めて、ひとりひとりが自らの可能性を考え挑戦できるよう学校生活を送っています。
―地域との連携はいかがですか?
松橋支援学校と地域との関係はとても自然で日常的です。
肢体不自由の児童・生徒にとって、学校という場所が様々な人が集う場所であることは、とても大切なことだと思います。もちろんPTAの方々にとっても、PTA間で、また、全ての教職員の方々と顔の見える関係で、信頼関係があることは、学校と家庭の連携が密になり、安心な子育てに繋がると思っています。
PTAやおやじの会の方々は、全肢P「熊本大会」の準備や学校のイベントなどの企画・実施をお手伝い頂くほか、学校のプール清掃などにも協力頂き、共により良い学校づくりをしています。
他、こどもたちの卒業後の現場実習や体験学習でお世話になっている各事業所に文化祭「きらり祭」で、販売物を提供していただいたり、地域の保育園の園児の皆さんは学校主催の夏まつりでお神輿や太鼓を披露してくださいます。また、地元JAさん、婦人会、餅つき踊り保存会の皆さん等々、本当に様々な地域の個人・団体が学校と繋がりを持ってくださり、児童・生徒の学校生活をより豊かにしています。
高等部専門学科園芸科の生徒が育てた野菜を購入されるPTAのお母さん方
―高等部専門学科の園芸科・工芸科の取り組みについて
高等部の専門学科園芸科の生徒が育てている野菜や花々は、学校敷地の中にある「きらりファーム」育ちです。
また、工芸科では、大型機械等を使った制作にも力を入れており、先生方がひとりひとりの子どもに真剣に向き合って指導しています。
専門学科では、働くチカラを養うための教育活動を行っています。
働くチカラとは、「体力」「忍耐力」「コミュ二ケーション力」。
この三つを鍛えるために、毎日ジョギングをしたり、組織のなかで自分の役割を認識したりしながら、最後まで仕事をやり遂げるチカラを育てます。
また、作業学習を通した先生や仲間とのコミュ二ケーション、育てた野菜を販売するときに養うコミュ二ケーション力など、仕事を通して人と関係するチカラを養います。
生徒のこのようなチカラは確実に伸びています。
左上・右上:園芸科の先生方 左下:工芸科の先生方
右下:くまもんのテーブルは大阪からも問い合わせがあった商品
温かくて優しい人柄が醸し出される藤田さんに研究大会のこと、学校のこと、地域のことなど、色々お話を伺いました。
―「熊本大会」はどんな大会になりそうですか?
昨年、会長になってすぐに、研究大会を熊本で開催することになることを知って、第57 回の愛媛大会に行ってきました。分科会にも参加し、PTAの方々が、様々な検討をされ、自らが試みることを提案したり、学校や行政等に要望書をまとめられたりすることをみて自分が所属しているこの連合会の意気込みが分かりました。
熊本大会は、熊本県内の肢体不自由特別支援学校の5校(松橋支援学校、松橋東支援学校、芦北支援学校、苓北支援学校、熊本かがやきの森支援学校)が協力して大会を運営します。現在、全肢P連「熊本大会」の成功へ向け、準備をすすめているところですが、5校のまとまりと協力には、大変感謝しています。
熊本大会にも500名くらいの参加者があったら・・と思って、働きかけをしていきたいと思っています。研究大会ですから、よりよい検討が熊本でも行われるようにしたいと思いますが、懇親会などでは、遠くから来てくださる方々に熊本らしさを味わって頂きたいと思っていて、いろいろ企画を考えているところです。ちなみに、アトラクションでは伝統芸能伝承部の高校生による「山鹿灯籠踊り」があるそうです。
熊本は、「人と人の繋がりが崩れていない」ところだと思っています。地元の人の繋がりも緩やかですがとても安心感があります。そして、外からの人も排除しないのも熊本の特徴だと思います。きっと、肢体不自由の子ども達にも、この風土はプラスになっていると思います。
―PTA会長に就任されて間もなく大きな大会運営大変ですね
そうなんです。
私の娘(次女のまゆさん)が今、松橋支援学校、中学部に通学しているのですが、松橋支援学校は知的障がいの生徒もいて、隔年で肢体不自由のPTAと知的障がいのPTAが交互に会長を務めているのですが、ちょうど肢体不自由のPTAの年回りで、この近くのコンビニの前でばったり会った、前会長さんに言われて就任してしまいました(笑)。全国大会もあり、当たり年でした。初めてのことでいろいろわからないことだらけですが頑張っています。
―日常のPTA活動はどんなお気持ちでされていますか?
私自身、まだ、111 名の児童・生徒のお父さん・お母さんと知り合えていません。
学校の保護者の繋がりは、地元の小学校ほどではないかなと思っています。
みんないろいろなキモチで子どもを育てていると思う。
先生たちも同じだと思う。だからこそ、家族のようなPTAを創りたいと思っています!
ー肢体不自由のお子さんのお父さんとして
娘さんの今後にどんな思いがありますか?
我が家は、松橋で、代々、トマト農家を営んでいます。
熊本の赤といって、トマト・イチゴ・スイカ・エビ・赤牛など「火の国くまもと」らしい農水産物は熊本ブランドとして有名なんですよ。
妻は、結婚前に、障がいのある児童が通園する施設で保育士をしていたことがあります。きょうだいはお兄ちゃんが18歳、お姉ちゃんが16歳、二人ともまゆを小さなときから可愛がってくれており、仲の良いきょうだいです。
まゆは、小学校は、地元の小学校に通学しました。身近な地域の小学校を選んだのは、まゆのことを皆に知ってもらいたかったことが一番。中学は、ハンディキャップがあっても、障がいのある子供たちの教育の専門性のある学校に行くことで、まゆの学習能力が向上するのではと思って松橋支援学校にお世話になることにしました。
まゆは、生まれてきてくれてよかったなあと思います。家族も温かい気持ちで生活できています。
でも、肢体不自由の子どもの親が皆、親亡き後のこどものことを一番心配しているのではないかと思っています。世の中は、障がいがあってもずいぶんと暮らしやすくなってきたと思いますが、それでも、松橋支援学校で、我が子以外のこどもたちのこと、また、卒業生のことなど知ると、まだまだ地域社会の中では、生きづらさがあるというようなことも気づきました。
どのような障がいがあっても、自分らしく暮らせるようであれば良いと思います。また、今でも、そういう家族がいて、相談場所さえ知らない人がいたら、本当に不安だろうと思います。そういう意味では、やはり、学校や地域のチカラはとても大切だと思います。
熊本県立松橋支援学校
平成27年全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会 全国大会 主管校
http://sakura1.higo.ed.jp/sh/matsuyo/home.html