Vol.3|仙台|
心豊かにたくましく生きていく人を育成する
宮城県立船岡支援学校

永い歴史につちかわれた 蔵王連峰の山々に囲まれた温暖な地域

仙台駅から、JR東北本線に乗り船岡駅まで約30分。駅から徒歩20分。
創立50年になる歴史ある船岡支援学校があります。
隣接して、体育学部とスポーツ科学研究科を設置した仙台大学・大学院のキャンパスがあり、スポーツウエアの学生たちの姿が支援学校周辺にもたくさん見られ、明るい雰囲気があります。
この辺り柴田町は、標高200mの山々に囲まれた盆地で、蔵王連峰の雪解け水を満々とたたえる白石川が町の中心部を流れています。気候は温暖で、東北地方にありながらも雪はほとんど降らず、四季を通じて過ごしやすい地域。
また、観光資源も豊富で、春の桜祭り、秋の菊人形祭りなどは、毎年多くの観光客で賑わい、白石川の「一目千本桜」や船岡城址公園の桜を一目見ようと、県内から20万人の人々が訪れるそうです。
取材当日は、東北本線が、強風のため、予定より、1時間半以上遅れての到着になりました。強風は蔵王からの吹きおろしで、この地、独特のものなんだそうです。

船岡支援学校の特徴 ~校訓は、「明るく 正しく たくましく」

9時半到着予定が、11時に。やっと到着できた取材スタッフを校長先生・教頭先生が温かく出迎えてくださいました。船岡支援学校の特徴を教えて頂きました。

肢体不自由児に対して、それぞれの障害の状態及び、能力・特性に応じた教育を行い、民主主義社会の一員として、心豊かにたくましく生きていく人を育成することが目標です。

日常の学校生活の中では、

・積極的に人とかかわり、社会生活に適応できる子ども
・自分で考え、自分で行動する子ども
・障害に負けずに心と体を鍛える子ども

 

を育て、社会的自立を皆が目指すよう指導しています。

阿部文男校長先生(左)と  小澤ちはる教頭先生(右)

                           

3つの教育類型

船岡支援学校には、3つの教育類型があり、それぞれの児童・生徒がいずれかの類型に属して、日常の学習を行っています。
・Ⅰ類型 : 教科を主とした教育課程(教科に準ずる教育課程)
・Ⅱ類型 : 領域・教科を合せた指導を主とした教育課程
・Ⅲ類型 : 自立活動を主とした教育課程

長期的な視野に立ち、小学部から高等部まで、系統的な指導支援の充実を図っています。昨年の高等部卒業生は、Ⅱ類型は、12人で就職,就労移行支援事業所等」の進路を選択しました。
またⅢ類型は、1人で、生活介護事業所(通所)です。文化祭などの学校行事には訪れてくれることが多くあり,「先輩の話を聞く会」などで後輩のために話をしに来てくれることもあります。

 

宮城県内の肢体不自由児支援学校と寄宿舎

地内には、1967年の開校と同時に設置された寄宿舎があり、県内全域から子どもたちが集まってきています。当時、宮城県内の肢体不自由児のための支援学校は、船岡養護学校(現:宮城県立船岡支援学校)1校でしたが、翌年、肢体不自由者と病弱者を対象領域とする、拓桃養護学校(現:宮城県立拓桃支援学校)が船岡養護学校拓桃園分校として開校し、1972年に独立しました。

現在も拓桃支援学校は、病院に入院している児童生徒が対象で、小学部・中学部のみが設置されています。そのため、船岡支援学校では、宮城県全域から入学した児童生徒が学んでいます。学校も寄宿舎も高等部生が多く、寄宿舎では生活の自立を目標に、全校59人の在籍児童生徒の内、現在24名の生徒たちが元気に共同生活をしています。

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<寄宿舎での自治活動「明真会」の様子>
年2回、役員の承認や係活動や行事等について話し合いを持ち、寄宿舎生活を、より楽しく充実したものになるように、生徒たちの意見を出し合って運営できるようにしています。

 

小学部・中学部・高等部共に、近隣の学校と交流会を行っています。高等部は、宮城県立柴田農林高等学校の生徒と年に1回交流会を行い、ゲーム等を一緒に楽しんでいます。

地域連携としては、船岡は、戦時中、海軍が火薬爆弾を造る工場があったところで、現在も、自衛隊船岡駐屯地が近隣にあります。この自衛官の方々が、支援学校に対するボランティア活動として、学校敷地の草刈りなどをしてくださっています。また、隣接する仙台大学は、体育学部を中心とした大学で、船岡支援学校の体育の授業に施設設備を貸してくださるなどの協力をしてくれています。

活発に行われる交流会や地域連携

 

「自発・自主・自立・協働」から生まれる「創造的成果」を目指す学習体制

外部専門家の存在ーこども達の成長をより一層高めるために

船岡支援学校では、「肢体不自由教育の専門校として」こども達の成長を最大限、教員と一緒に高めていくために、また教員の指導力を向上させるためにも、外部の専門家に学習の中に入って頂き、指導を行っています。作業療法士や音楽療法士などの専門家の指導は、効果的な教育の手掛かりとなる発見が様々あります。そして、こどもたちの表情も生き生きとしています。

■髙山仁先生(音楽療法士)と「Musicking」
Musicking(ミュージッキング)とは、直訳すれば「音楽する」と言う意味で、音楽のやり取りを通じて、心が動く経験そのものを指すそうです。
船岡支援学校では、音楽療法士の高山仁先生に、6年間、「音楽を楽しみながら、質を高めていくこと」と「音楽を使って自立活動の目標に向かっていく」という新しい効果的な考え方や即興的なやり取りの指導を受けています。Musickingは、自己の意識(自己確信、自分の行動を自分で分かっている)を高めながら「人とのやり取りを楽しむ」「感情のコントロールができるようになる」「物事を関連付ける力をつける」「自分の意志を相手に伝えたり表現したりできるようになる」などを目標にして、児童生徒が、より豊かに生きるために必要な力を育成しています。

「先生,それなあに?」「これからやる曲は,こんなイメージだよ」


Musickingの成果は様々です。まずは、いきいき・のびのびとした授業を通して、教師と児童生徒が、共に成長していることが一番の成果です。児童生徒は、「自己肯定感が高まった」「見通しが持てるようになり待つことができるようになった」「楽器の仕組みがわかって、鳴らせるようになった」「先生や友達をよく見るようになって、鳴らし方を真似するようになった」「音楽のやり取りを長い時間続けられるようになった」・・他にも「気分に左右されず安定して取り組めるようになった」「体幹が安定した」など様々です。

 

高等部作業学習

■陶芸班

陶芸班は,粘土を手びねりやタタラ作りで成形し,高温で焼成することにより皿やカップなどの陶器を製作しています。文化祭における販売では,レジスターを用いて現金の出納を行ったり,製品を新聞紙に包み袋詰めにしたりしながら,購入者とのやり取りも学びます。
日々の活動は挨拶で始まり挨拶で終わります。粘土の成形により手指の巧緻性,集中力や根気強さの向上を図るとともに,挨拶をきちんと行うなどのコミュニケーション能力を培うようにしています。

 

■造形班印刷部門

主に名刺やカレンダーなどの印刷物を製作しています。パソコンでの入力作業だけでなく、販売でのコミュケーションを通して、将来につながる学習をしています。製品の購入者から取り組みの姿勢を褒められるととても自信につながります。

■農業班

農業班では、野菜や花の栽培を通して、働く上で大切な心得を学ぶことや体力、コミュニケーション能力の向上、栽培方法を習得することなどを主なねらいとしています。辛い作業も多いですが、生徒は、自分たちで育てた野菜を収穫できることや自然と触れ合えることを喜びに感じ、楽しみながら作業に取り組んでいます。

 

第68回宮城県高等学校美術展
(宮城県美術館県民ギャラリー/宮城県高等学校美育研究会主催/河北新報社など共催)
全応募総数535点,優秀賞48点,奨励賞47点

優秀賞 「果獣100%」高等部1年B組(現在2年B組)協同作品 キャンバスにアクリル1167×1167mm 2016年

優秀賞 「遠吠え」高等部2年D組(現在3年D組)協同作品 流木,金属廃材他  840×740×650mm 2016年

授業では、予め想定された青写真に従って進めていくというプロセスではなく、試行錯誤のなかから開かれていく想定外の飛躍的な構想こそ大切にしたいと考えています。そうして導かれた作品は硬直した一義的なものではなく、多義的で(多様な解釈が可能な)より柔軟性に満ちたものであってほしいと願っています。毎年、授業で制作した作品を宮城県高等学校美術展に出品し度々受賞しています。昨年は、2点の協同作品が優秀賞を受賞することができました。

 

とっておきの音楽祭

とっておきの音楽祭は2001年から毎年仙台で開かれている、障がいのある人もない人も一緒に音楽を楽しみ、音楽のチカラで「心のバリアフリー」を目指す音楽祭。船岡支援学校の児童生徒も小学部から高等部まで 20名程度が出演します。ステージは、仙台中心部の商店街や公園で、県内外から数多くのバンドが出演する日本最大級の音楽祭です。


今年も放課後、バンド練習の音が聞こえる時期となりました。今年で15回目の出場となります。毎年この音楽祭に参加することを楽しみにしている児童生徒・教師が集まり,短い期間の練習ではありますが本番に向けて一生懸命練習をしています。年々参加人数が増え,昨年度は50名を超える参加で迫力ある演奏でした。当日は児童生徒の歌と笑顔,そして教師によるこの音楽祭だけに結成されたバンド演奏が一つになり、会場を盛り上げています。

 

校外でのスポーツ活動

激坂注意!日本屈指のアップダウンで有名な第29回しろいし蔵王高原マラソン大会3km部門に生徒とともに出場してきました。白石市出身の本人の希望もあり,そして日ごろの自立活動の特訓の成果を発揮する舞台として,お互いに話し合って出場を決意。地元の方々からのたくさんの声援を受けながら,見事に完走することができました。

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現高校3年生菊地優葵さん(左)とスポーツ指導の植木先生(右)。完走しました。

 

船岡支援学校のPTA活動

宮城県の肢体不自由児の特別支援学校は、船岡支援学校と拓桃支援学校の2校ですが、PTA活動があるのは、船岡支援学校のみ。肢体不自由の保護者同士のつながりや、保護者と学校のつながりをより良く持ち、児童生徒の成長を育むことは大切なことと捉えて活動が行われています。
PTAの専門部会は、厚生・事業・広報の3つの部門に分かれていますが、毎年、60名程度の保護者の中から委員が選ばれ、取り組みをしています。特に、年に2回の環境美化活動としての窓ふき作業や、文化祭での障害者作業所のお弁当販売、児童生徒の進路先を保護者が勉強する、職場見学会など、仲間づくりを大切にしながら、様々な活動が行われています。

 

8月23・24日全国大会に向けての抱負

第59回全肢P連「宮城大会」は,『語り合おう つながろう ~宮城につどい 明日への力を~』 のサブテーマを掲げ,全国のみなさまをお迎えします。特に全員が活発に意見交換できる場として,第2日に「会員懇話会」を設けました。語り合うことで思いをひとつにし,お互いエンパワーすることでこれからの活動への糧にしていただきたいという願いです。
基調講演では,文部科学省特別支援教育調査官の分藤賢之先生から,今後の特別支援教育の施策の方向性についてお話しいただきます。さらに分科会でも,国の施策立案に関わられている方々や,教育・医療の専門分野で活躍されている先生方からご助言をいただきます。
また,会員研修では,本校PTA入生田前会長から,東日本大震災の被災経験を振り返りお話しをしていただきます。車椅子で生活するお子さんを支えながら,どのように震災を乗り越えたのか,防災についてのメッセージとともにお話しいただきます。
懇親会でも素敵なアトラクションを準備しております。また,会場は仙台駅とつながったホテルで,交通至便であるとともに,お買い物などのお楽しみスポットもすぐそばです。

宮城大会は東日本大震災後,被災地で開催される初の全肢P連全国大会です。熊本・大分の地震被害への思いを込めて,そしてこれまで多くのご支援をいただいたことへの感謝の気持ちを持って運営にあたる所存です。
また,協賛活動を通じて,地元企業様との関係もできました。私たちの活動を社会に広く知っていただく機会としても大切にしたいと考えております。

今大会から2日間開催となり,ギュッとコンパクトになった部分もありますが,今までの大会に負けない内容として参りたいと思います。そのためには全国から多くの方々に参加していただくことが大切です。大会の成功に向けて,ご協力をよろしくお願い申し上げます。

 

宮城県立船岡支援学校
平成28年全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会 全国大会 主管校
http://funayou.myswan.ne.jp/

PTA会長 関 真納美さん記事
会員研修 発表者 入生田 景子さん記事


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宮城県立船岡支援学校

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